ベッドサイドにいる臨床家の強みは、看護研究の主テーマである看護現象を常時観察し、経験知を積み重ねている点にある。また患者に侵襲やリスクがない限り(原則看護ケアはそういうものであるが)、明日からよりよいケア内容へと変更し、その効果を実際に評価していける点にある。これらの強みを生かす研究としては、以下のような研究デザインがあるのではないだろうか。
詳細に関しては、今後内容を充実させていく予定である。
看護研究で用いられる研究デザインの分類は、大筋では違いはないが、様々な提案がされています。
興味のある方は是非成書(Polit and Beck,2004;Burns and Grove, 2005;
Brink and Eood,1988)を参照してください。
Polit, D.F. and Beck, C.T.(2004)/近藤洵子監訳(2010).看護研究,第2版.
Burns, N. and Grove S.(2005)/黒田裕子ほか監訳(2007). エルセビア・ジャパン.
研究デザインはResearch Question(研究疑問:以下、リサーチ・クエスション)を解くために計画されます。
質的研究ならできそうだからとか、アンケート調査ならと、デザインありきで研究をするのは、本末転倒です。
リサーチ・クエスションのレベルによって、研究デザインの大枠は決まるので概略を以下に示しました。
リサーチ・クエスションの段階 | 研究デザイン |
---|---|
1.・・・とは何か?
|
質的記述的研究デザイン
|
2.現象を取り巻く変数は?
|
|
3.現象の実態は?
|
|
4.変数間の関連性は?
|
|
5.因果関係の検証 | |
6.臨床への適応、普及 | |
7.現実世界での検証とケアの精錬 |
「何か変だぞ」「解決したい!」と思ったときが研究の初め時。
でも、単なる「疑問」は、通常研究を導く疑問リサーチ・クエスションではありません。
実は研究を進める上でリサーチ・クエスションの精錬は最も難しく重要です。あなたの研究がうまくいかないのは、適切な「Research Question」になってないからかもしれません。
以下の手順で研究を進めますが、初心者はひとりで行うのは労多くして甲斐なしということに。研究の教育をきちんと受け、指導、助言してくれる人を探しましょう。
1.リサーチ・クエスションを設定する
2.リーサーチ・クエスションを解くべく文献検討
3.文献を読んでも疑問が解けない場合、研究を計画(研究計画書の作成)
−研究計画書は以下の構成です。
1)研究タイトル
2)はじめに(研究の背景・意義)
3)研究目的
4)研究の方法
(1)研究デザイン
(2)研究対象/研究協力者
(3)データ収集方法
(4)データ分析方法
5)倫理的配慮
4.研究の実施
5.研究結果を整理し、論文を書く。
−論文は研究計画書に以下の項目をつけたものです。
6)結果
5)考察
7)結論
・謝辞
・引用文献リスト
6.研究成果の公表
論文として投稿し、掲載されてこそ、その研究成果を第3者にきちんと伝え、社会に還元されます。
リサーチ・クエスションとは、問題を解決するために研究を通し明らかにしたい問いのことである。
研究に関する用語は、訳者によって様々な日本語名がつけられることが多いが、以下に用語とその定義を示した。
*研究トピック(Research topic):研究の主題 ex. 放射線治療を受ける頭頸部がん患者の口腔ケア
*研究問題/研究課題(Research problem):研究し解決する必要がある困り事、問題。
Brink&Wood(1999)によればトッピックの紹介、重要性の説明や理論的根拠、明らかにしたい内容の説明を含む。
ex. 放射線治療を受ける頭頸部がん患者は口腔粘膜炎が発症し重症化しQOLが著しく低下する。
口腔粘膜炎は一般的に口腔ケアを実施することによってある程度軽減できることがわかっている。
そこで上記患者を対象に口腔粘膜炎を予防、軽減化させるような看護介入を明らかにする必要がある。
*Research Question(研究疑問/研究設問): 問題を解決するために研究を通し明らかにしたい問い
Ex. 放射線治療を受ける頭頸部がん患者に口腔ケアプログラムを実施することによって口腔粘膜炎の発症、重症化を軽減することができるか?
研究のタイトルを決める前に、ということは研究目的を決める前に、必ず、必ず文献検討をしましょう。
文献検討には以下のような役割があり、研究を通して行うことで駄作を避けることができます。
繰り返しますが文献検討をせず研究に着手してはいけません。
<文献検討の役割>
1)その分野の知識に精通する→Research Questionの設定と精錬
2)研究する概念枠組みを考える
3)研究に適した研究デザインやデータ収集法を学ぶ
4)相談や助言をもらえる専門家を知る
5)研究結果の解釈、考察、提言に活用する
<文献検索の方法>
通常はデータベースを使って文献検索を行います。詳しくはこちら(資料1)センターメンバーは看護の質の研究をしています。
看護ケアの質評価・改善システム(看護Quality Improvement)として運営していますので、以下のサイトを参考にしてください。
http://nursing-qi.com/
初心者には自分達が考えたアンケート紙を用いてのアンケート調査はお勧めしません。
質問項目の作成は大変に難しく、聞いても何も明らかにならない質問をし、研究協力者の貴重な時間を無駄にしてしまう結果に終わることが多いからです。
アンケート調査は以下のような問題があります。リーサーチ・クエスション(研究疑問)を解くのに他の方法はないのか探してみましょう。
<アンケート調査の難しさ>
1)回収率の悪さ
2)限定された対象者(文字を理解し文章が書ける人)
3)回答の不確かさ
(1)質問が誤解される可能性
(2)意図的なあるいは無意識な回答のバイアス
(3)無回答の出現
4)深い内容を聞き出せない
それでもアンケート調査が最適という場合は以下の点に注意して行いましょう。
1.アンケート用紙の作成手順
1)リサーチクエスションの明確化
2)変数の設定
3)
4)予備調査の実施
2.アンケート用紙の構成
1)表紙−研究依頼
2)フェイスシート−回答者の属性を聞く
3)質問項目
4)回答への謝辞
3.質問を作る時に気をつけること
1)適切な言葉を選ぶ
(1)1項目に1質問
(2)平易で簡潔な文章
(3)中立的な記載
(4)回答者を尊重した言葉遣い
(5)二重否定は避ける
(6)誰のことを聞いているのか明確にする
2)質問項目は必要最小限に
3)質問順序
(1)関連する質問はまとめる
(2)答えやすい内容からはじめる
4)見やすい体裁